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トレンドは年々シンプルに(WEBサイトはシンプルなデザインが良い理由)

こんにちは、クリエイターの七田です!

最近、国内のWEBサイトを見渡してみると、シンプルなデザインが主流となってきています。

ご依頼いただくデザインも、だんだんとシンプルなデザインをご提案しても受け入れられています。5年前は、もっと賑やかで要素が盛りだくさんのデザインが好まれ、余白をつけようものなら「ちょっと寂しい」といったご意見を頂戴することが多くありました。

思い返せば、佐藤 可士和 氏がユニクロのロゴを手掛けたくらいから、ミニマルデザインが認知されるようになったのでしょうか。それまでは、ロゴデザインのご提案に際しても、グラデーションを使った立体的ロゴマークが好まれ、フラットデザインを何案か織り交ぜても箸にも棒にもかからない時代でした。

もしかしたら、「手抜き」と捉えられていたかもしれません。しかし、シンプルなデザインほど難しく、実はシンプルなものの方が複雑なものよりもデザインするのが数倍も時間をかけて行います。
例えば、2本の直線で構成されたデザインが簡単に作られたかというと大間違いであり、最終的なアプトプットに辿り着くには、線と太さ、長さ、間隔などのバランスを何十通りも試してみたり、コンセプトの落とし込みが上手く行われているかのかの確認、実際に使用する媒体の検証など、かなりの労力が必要とされます。

そもそも日本人はミニマリズムと相性のいい民族といえるかもしれません。「禅」や「侘び寂び」の文化、三十一文字に心情を凝縮する和歌や俳句もミニマリズムの文芸といえ、枯山水に代表される日本庭園も無駄をそぎ落としたものこそがより豊かであるというミニマリズムの精神を具現化したものといえます。

外部環境の変化がWEBデザインのシンプル化を加速

2021年時点日本国内で、スマートフォンからのインターネット利用者がデスクトップを上回ったとのことで、今後さらに多くの人々がスマートフォンからのWEBサイトへのアクセスが増えていくと予想されます。つまり、モバイルに適したデザインがなければ、素晴らしいユーザー体験を提供できなくなります。そのため、モバイルの小さな画面での使いやすさを考慮し、不要な要素が排除され、シンプルなレイアウトが主流となっています。また、WEBサイトはレスポンシブデザインは標準となり、PC、スマートフォン、タブレットといったデバイスに対して適応性のあるデザインが求められます。

このように、時代の移り変わりと共に、シンプルなデザインが人気となりました。

情報の詰め込み過ぎは認知されない

トップページに、これでもかとばかりのボリュームでコンテンツ(デザイン要素)を詰め込んでいるWEBサイトがあります。こういったサイトでは、探している情報がどこにあるかわからないといった経験があるかと思います。デザイン初心者は差別化のためと言って必要以上に装飾を施してしまい、前記した問題を抱えたサイトをクライアントに提案してしまいます。差別化のために機能性(ユーザビリティ)を犠牲にしてはいけません。機能的なものはシンプルであってデザイン的にも優れています。

毎日膨大な量の情報にさらされている現代社会の消費者にとって、シンプルで明瞭なデザインは情報を素早く認識して効果的に処理することができます。脳科学的によると、人間の記憶には表示要素の20%程しか残らないとのことで、無駄な要素を極力排除した方が情報伝達がしやすいと言われています。

UI(ユーザーインターフェース)の最適化で最も重要な役割として、ユーザーに対して快適な体験を提供し満足度をより高めることにより、サイトやアプリケーションの利用頻度を向上させ、長期的で良好な関係を築くことです。その際にはできるだけ無駄な装飾や選択肢と言ったノイズを少なくすることが求められます。

何かを購入してもらう際にも選択肢は少ない方が購入率が上がることが科学的にも実証されているので、それがWEBサイトデザインのシンプルな方が良い理由といえます。

選択肢が多いと選べない

選択肢もシンプル化の対象になります。

品揃えは多ければ多いほどユーザーに親切であるといって、沢山の製品(サービス)を用意していませんか?

実は製品(サービス)を多く作りすぎたことで、ユーザーは選びきれずに離脱してしまう現象が起こっているかもしれません。簡潔に言うと『検討できる選択肢が増え過ぎると選択が難しくなる』という、人の心理的行動のことです。

実際に1995年コロンビア大学に所属するシーナ・アイエンガー教授の研究で、6種類のジャムを並べた売場Aと24種類のジャムを並べた売場B、どちらの売れ行きが良かったのか調べるというもので、6種類のジャムを並べた売場Aのほうがよく売れたという実験結果が出た「ジャムの法則」として知られています。

WEBサイトの構成にもジャムの法則と同じことが言え、選択肢を可能な限り少なくして、設定したゴールまで誘導する動線をシンプルにレイアウトすることが大切です。

シンプルなデザインでは空白が重要

Webデザインに限らず、優れたデザインにおいてもっとも重要な要素の1つは「空白の使い方」にあります。シンプルなデザインでは、配置されている要素と同じくらい空白が大切になります。

デザイン上での空白はホワイトスペースとも呼ばれ、主張すべきデザインやコンテンツを際立たせるために周囲に取られるスペースを指します。こうした余白を活用して、視線を誘導することが可能となります。人が視線を動かすときは、無意識に「この順序で見る」という視線のパターンがいくつか存在します。コンテンツのレイアウトだけでも視線を誘導することは可能ですが、さらに「余白」をうまく活用すると、ユーザーがストレスなく瞬時に情報を理解する手助けにもなります。

また、テキストや画像が隙間なく詰まっていると、テキスト見づらさや情報の分かりにくさに繋がります。そのようなデザインだと、ユーザーは途中で読む気をなくして離脱してしまうかもしれません。テキストの大きさ、改行位置や行間などもデザインの重要要素と捉えてください。

ミニマルデザインを取り入れた参考にすべきサイト

私は事あるごとに「Appleのサイトを見て!!」と社内やクライアントにも言います。

Appleは、その製品だけでなく、ウェブサイトにおいてもミニマルデザインを活用しています。シンプルで直感的なナビゲーション、製品やサービスに焦点を当てる為、ホワイトスペースを効果的に使用し情報が整然と配置されています。カラースキームも白・シルバー・ブラックがメインでAppleブランドのアイデンティティを強調しています。また、アニメーションなどもさりげなく取り入れることにより、訪れたユーザーを飽きさせる事なく情報を提供してくれています。

AppleのWEBサイトでもう一つ注目するところは、数少ない画像それぞれが高品質です。美しく設計されたレイアウトや明確なナビゲーション、完璧にデザインされた美しいウェブサイトであったとしても、古い画像や低解像度の画像によって印象は大きく変わってしまいます。ピンボケの画像を使うくらいならテキストで代用した方が、ユーザーの印象は良いかと思います。

シンプルなデザインの注意点

Simplicity is the ultimate sophistication.

「シンプルさは究極の洗練である」芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチが残した言葉のひとつで、デザインに携わった経験があれば、この言葉の重みを十分に実感すると思います。

デザインは要素を盛ったり加えたりすることで、見栄えをよくすることはいくらでもできます。しかし、装飾に重点を置きすぎると実用性が犠牲になることがあります。逆にシンプルなデザインを追求していくと、デザイン要素と機能性のバランスを見つけることが挑戦となります。

シンプルなデザインは時にブランドの独自性をスポイルしてしまい、差別化を著しく阻害する恐れがあることをデザイナーは気をつけなくてはなりません。多くのWEBサイトが同様のシンプルなデザインを採用することで、ブランド間の識別が困難になることがあります。このため、ブランドの個性と特色を維持するため、独自の色彩、タイポグラフィなどの視覚的な要素を組み合わせることで、ブランドの個性を際立たせることができます。そのためには、企業のコンセプトや価値観の理解を深め、消費者に印象的なメッセージを伝えられるブランドストーリーをいかにデザインに落とし込むかを最初に考えることをお勧めします。

また、シンプルなデザインは通常、ユーザビリティとの親和性が高く扱いやすいものとなりますが、時にはあまりにも単純すぎてユーザーが混乱することがあります。例えば、説明書きのテキストもないアイコンのみで表示されるボタン、実際に押してみないとどんなアクションが起こるかわからない。。。なんてサイトも多く存在します。ミニマルに特化し過ぎた弊害と言えるかもしれません。

ユーザーのことを考え、何がなんでも要素を削ぎ落としていくのではなく、時には必要不可欠な情報は表示してユーザー体験を優先させるべきではないかと思います。

多くの企業が直面している課題の1つ、多くのコンテンツを小さい領域に収めようとすると、サイトが雑然として美しさを損なってしまいます。また、様々なコンセプトを詰め込み過ぎてデザインの統一感が失われてしまっているコーポレートサイトもあります。もし、掲載したいコンテンツが多く存在するのであれば、情報を整理して別サイト(ページ)に分けてしまうのもシンプル化を目指には必要かもしれません。

さて、4000文字も超えてきましたので、今回はここまでとしたいと思います。

最後まで、読んでいただきありがとうございます。

管理者